以下のような問題が、私学教員が抱えやすい労働問題です。

学校現場では、違法行為が蔓延しています。しかし、しっかり法律を知り、証拠を集めて仲間と権利を行使すれば、改善をすることは可能です。

◆長時間労働・休憩未取得

担任、部活、公務分掌など、幅広い業務を担うことで、教員は長時間労働に陥っています。厚生労働省が定める「過労死ライン」(月80時間残業)を超えて働く教員も珍しくありません。

また、休憩時間が明確に定められていなかったり、昼休憩や授業のない時間にも、授業準備や生徒対応を行い、十分な休憩が取れないことも多いです。労働法上の休憩時間は、私的に携帯やネットを見たり、単にご飯を食べているだけなど、「完全な自由時間」を指します。

長時間労働は、タイムカードのコピーや写真、パソコンのログ記録、メールの履歴などの労働時間の証拠を集めて、労働時間を証明することが重要です。休憩も、何時から何時まで取れていたのかなど、1分単位でのメモを毎日残しましょう。

証拠を残して、労働時間の削減や休憩の取得などを求めることが可能です。

◆残業代不払い

私立教員は、公立教員と異なり、「民間労働者」扱いです。公立教員は「給特法」(「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」)があることにより、残業代が払われないことが「合法」となってしまっています。しかし、私学教員は、残業代は1分単位で割増賃金を支払わなければ違法です。

私学でも、公立に準じて、残業代の代わりに「定額手当」(「教職員調整手当」「教員特別手当」など)しか支払われない場合もあります。これらも、「定額手当」の導入要件を満たしていなかったり、定額手当分の残業時間数を超えた残業代が支払われていないなどの問題が生じていることが多いです。

労働時間の記録を残し、残業代を1分単位で請求し、将来の改善を求めることが可能です。

◆非正規教員への差別

私立高校では、非正規教員の割合は、約4割にも及びます。低賃金や1年更新の不安定な立場で働いている非正規教員は年々増加しています。非正規教員の典型的な問題は以下です。

①雇い止め(解雇)

非正規教員は1年契約です。正規教員への登用や契約更新の期待を持たされながらも、学校側の都合で、一方的に雇い止めされることがしばしばあります。募集要項のスクリーンショットやコピー、採用面接や入職後の面談での録音(相手に伝える必要はありません)などの証拠を集めて、契約更新の期待を持たせる言動を証明していきましょう。雇い止め撤回を勝ち取れる事例もあります。

②「同一労働同一賃金」

正規教員と同じく、担任や部活、校務分掌などを担っている非正規教員はたくさんいます。しかし、待遇は正規教員と異なり、給与は半分程度という学校もあります。これらの差別は、「同一労働同一賃金」に反し、同じ待遇を求めることも可能です。契約書や学内の仕事の分担表等を手元に残し、同じ仕事をしているのだから、同じ待遇にするよう求めることが可能です。

③非常勤講師の「コマ給」

非常勤講師は、授業に対する給与しか払われない「コマ給」が問題となっています。非常勤講師は、授業以外にも授業準備や生徒対応、テストの作成や採点などの付随業務が膨大にありますが、それらに賃金が払われません。上記の内容は業務ですし、労働法では働いた分は1分単位で支払わなければ違法です。労働時間記録を集めて、賃金が請求可能です。

◆セクハラ・パワハラ・マタハラ

学校現場では、様々なハラスメントが蔓延しています。セクハラ・パワハラ・マタハラに対しては、ICレコーダーや携帯で音声を録音したり(相手に伝える必要はありません)、メールやLINEでのやりとりのメッセージのスクリーンショットなどを残したりしましょう。謝罪、賠償、再発防止などを求めることができます。