東京都文京区の私立京華商業高校で、教員の労働時間を管理せず残業代を支払っていなかったとして、中央労働基準監督署が是正勧告していたことが25日、分かった。元教員が加盟する労働組合「私学教員ユニオン」が東京都内で記者会見し、明らかにした。勧告は12日付。
ユニオンによると、残業は授業の準備や部活動の指導のためで、休日出勤もあったが残業代は支払われなかった。学校は出欠を確認するだけで労働時間は把握していなかった。労基署が調べたところ、パソコンの利用履歴などから未払いが判明。月平均で残業が約50時間に上った教員もいた。
◆組合員のコメント 「京華学園への是正勧告を受けて」
この度、2019年7月12日に中央労働基準監督署から京華学園に対して、労働基準法第37条違反で是正勧告書が交付されました。私たちは、この労基署の判断に歓喜いたしました。やっと行政が我々の置かれている労働環境は違法であるという判断をしてくれたと嬉しく思いました。
2019年1月からの4回に及んだ団体交渉の中で、我々は再三、京華学園に対して、「我々が実際に業務している労働時間を客観的に記録してください。そのためにタイムカードの導入を行ってください」と懇願してまいりました。しかし、学園側は頑なにタイムカード導入を拒み続けました。「タイムカードよりも客観的に労働時間を計れるものはありますか」という問いに対しても、何も提案をしてくれませんでした。
「法定労働時間を超えている時間に対しては、しっかりと残業代を支払ってください」とも懇願してきましたが、京華学園が対策を講じることや、時間外労働を認めることはありませんでした。
教員は、朝生徒を職員室に呼んだり、学校始業前に準備しておかなければならないものがあったりすれば、7時半には学校に到着しなければいけない日もよくあります。特筆すべきは終業時間です。6時間目の授業は15時に終わり、終礼と掃除を終えるのが15時半です。そのあと生徒が受験する検定試験があれば、検定対策をします。部活動の活動日であれば、部活終了が18時半を過ぎる場合、私たちが帰路につけるのは19時過ぎです。場合によっては部活動が長引き、退勤が20時になることもありました。
私たちは生徒の学習の手伝いをすることや、部活動で頑張っている生徒たちを見守ることに異議は唱えません。教師として、生徒を応援することは当たり前で、生徒たちの目標、目的の達成は、私たちの喜びでもあります。ただ、私たちは労働と認めてほしかったのです。何もせずに学校に残っているわけではないし、職務として学校に12時間いるのです。その部活動に対しても、京華学園は「部活は好きでやっているのでしょう。職務ではない。」と団体交渉の場で言い放ちました。私は怒りを通り過ぎて、呆れかえってしまいました。京華学園の理事長や常務理事、校長がその様に考え、学校教育を行っているのかと、現場を踏んできた教員たちが管理職になった途端に現場の教員が行っていることから目をそらし、どれほど仕事をしているのか把握することすら忘れてしまうのかと。京華学園は、この度の労基署からの是正勧告を真摯に受け止め、労働時間の把握と、ずっと不払いにしていた労働時間に対する対価を清算していただきたいと強く願います。
最後に、この様な教員の労働環境は、私たち教員にとって、当たり前になっています。私学教員ユニオンで私の労働時間を計算してもらった時、月に50時間ほどの残業をしていることを、私は普通だと思ってしまい、残業代は教員には支給されないという考えが自身の中で根付いてしまっていたのです。この感覚は私学教員の先生たちの中では通常になっており、現在も多くの私学学校で当たり前の様にまかり通っている状況です。京華学園を皮切りに、改善が私学業界全体に浸透し、労働時間管理、支払われるべく対価がちゃんと支給される健全な教育現場が作られることを願ってやみません。そのためにも社会の皆様に私学学校の問題に目を向けていただき、声を出していただきたいと、お力添えを賜れればと思います。何卒よろしくお願いいたします。