【大学付属中高一貫校A】非正規雇用教員への差別、人権侵害行為をやめてください!

東京都にある私立大学附属中高一貫校A校において、非正規雇用で働く教員の人権を無視した労働契約、同一労働同一賃金からかけ離れた待遇差別が問題となっている。

A校は、元々高校のみの附属校であったが、10年ほど前に中学が開校したことで専任教諭(正規雇用)の業務負担が増大し、その解消を求め2015年頃より「特任講師」(通常の私学では「常勤講師」と呼ばれることの多い非正規雇用)制度を導入した。しかし、この特任講師制度にはいくつもの問題があることが顕在化している。

現在、低賃金・細切れ雇用で働く非正規雇用労働者の劣悪な労働環境が、深刻さを増す格差社会の大きな要因となっている。

そのような状況を改善するために、近年、「無期転換ルール」(5年働いたら無期雇用へ転換できる法律)や、今年の4月から施行された「同一労働同一賃金」(同一労働をしているにも関わらず不合理な待遇格差を禁止する法律)などの法制度ができ、非正規雇用の待遇改善は社会的な流れになっている。

ところが、A校では、そのような流れに逆行し、法の抜け穴をくぐろうとする「脱法行為」が進められている。そのような非正規雇用で働く教員を使い捨てにする姿勢は、社会的に強く非難されるべきものであろう。

詳細は以下のようなものだ。

◆専任教諭と同一労働をしているが、年収格差200〜600万円。「無期転換ルール」の潜脱も。

特任講師は、専任教諭と同じ業務を行なっているが、その待遇は専任教諭と大きく異なっている。賃金体系が異なっているためである。特任講師は年俸制(定額給与)で、専任教諭に支払われる各種手当や賞与などは一切付かない(なお、残業代も一切払われておらず、それは労基法違反である)。経験年数によって給与が異なり、①教員経験年数5年まで、②5〜10年まで、③10年以上の3段階の不合理な給与形態が設定されている。

一方、専任教諭は、基本給は年功序列による賃金設計で、各種手当はもちろん、賞与も支払われる。このため、専任教諭と特任講師は30代で200万円以上、50代で600万程度の給与格差がある状態である。そして、この状態が5年以上続いている。つまり、特任講師に対しては、専任教諭と比較すると待遇差別により、5年間で、1000万から3000万円の支払うべき対価が払われていなかったことになる。

また、労働契約にも問題があり、「無期転換ルール」を意図的に潜脱しようとしている。特任講師は無期転換され5年以上働けないように、「1年更新・最大5回まで更新」という契約を結ばされている。これらは、冒頭に述べた非正規雇用の雇用環境改善という社会の流れから逆行する、悪質な対応と言わざるを得ない。

◆「同一労働同一賃金」逃れと、生徒・保護者無視の考え方はやめるべき

そして、このような特任制度を問題視した特任講師Bらは、昨年2月に特任制度改善についての要望書を校長へ提出し、管理職に対しても制度の見直しと改善を求めた。しかし、要望書に対する回答は半年以上経ってもなされなかった。今年になって行われた話し合いでは、特任制度について法的に問題か否かのみが校長の関心事で、生徒やこれまで働いてきた特任講師に対しての配慮は全く見られなかった。

その結果、4月から施行された「同一労働同一賃金」法を根拠に、これまで行ってきた業務から外れるような内容の契約書にサインを求めてきた。これは、これまで専任教諭と同一労働をしてきた特任講師の差別的待遇を改善するのではなく、同一労働を「解除」し待遇差別を維持するものであり到底納得できるものではない。契約内容が昨年度までと大きく異なるため説明を求めたが、平然と「昨年の特任の先生方からの要望書を参考にした」などと答え、業務格差を設けることを正当化しようとしていた。

契約書をめぐり話し合いの場を求めたが、管理職からは大学法人と調整しているなどという返答で、契約書を交わせないまま、緊急事態宣言などの影響によって在宅勤務となってしまった。そして5月中旬を過ぎた現在もそのままなんの音沙汰もない。これは不誠実な態度と言わざるを得ない。

本当に労働者の権利を守ろうと思うのであれば、労働者の合意や理解が得られるよう話し合いを進めるべきではないのか。

そして、「同一労働同一賃金」法が施行されたことを理由に、なぜ業務を外されなければならないのか。これまで特任講師は専任教諭と同一労働をしていたのであるから、「同一賃金」に向けて業務を外すのではなく、なぜ賃金を上げることができないのか、大学法人の危機感のなさ、附属校専任教諭の特任講師軽視とも取れる言動にも疑問が残る。

今後、社会情勢や立法趣旨が正しく認められ、労働者の権利や生徒にとって不利益にならない教育がなされるような学校にしていきたい。

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