【#東洋大牛久】長時間労働や残業代不払いへ労基署が是正勧告!
私たち私学教員ユニオンは、茨城県にある東洋大学附属牛久中学校・高等学校(以下、東洋大牛久)と長時間労働や残業代不払い、非正規教員の待遇改善等をめぐり、団体交渉(話し合い)を行なっています。
その過程で、9月末に、茨城県の龍ヶ崎労働基準監督署が、東洋大牛久で起きている長時間労働や残業代不払いに対して「是正勧告」(行政指導)を出しました。
「是正勧告」は、労働基準監督署が労働実態を調査した結果、法律違反が明確に確認された時に出される公的判断です。
東洋大牛久で起こっている問題は、この学校に特殊なことではなく、教育業界全体へ広がっていることです。
自身の学校でも同様の問題がある教員の方はたくさんいるはずです。教員の労働環境は、生徒への教育の質に直結します。一緒に声をあげて、業界全体を改善していきましょう。今回のケースのように、法律違反は改善できます!
◆是正勧告の内容
現時点で、36協定を超える長時間残業、残業代不払い、労働契約書を出していないといった3つの是正勧告が出ています。また、法違反が「疑われる」時に出る「是正指導」も休憩取得について出ています。
<是正勧告>
①労働基準法第32条(36協定にある月19時間を超える残業をさせている)
②労働基準法第37条(残業代が支払われていない)
③労働基準法第15条(労働契約書を出していない)
<是正指導>
・休憩が十分に取れていない
◆長時間労働、残業代不払い、休憩未取得の実情
東洋大牛久の教員は以下に挙げるような幅広い業務を行うことで、長時間労働に陥っています。
36協定では月に19時間の残業までと定められているにもかかわらず、部活等を任されることにより長時間労働をしている教員がいました。
また、昼休みや授業のない「空きコマ」も授業準備や校務分掌等の仕事があり、休憩が1時間取れないなどの問題が発生していました(組合主張)。
その結果、組合計算では、「過労死ライン」(月80時間残業)を超える残業(1日平均休憩20分計算、最長月で94時間ほど)をする月もありました。その長時間労働に対する残業代も「給特法手当」(本俸の4%を残業代として支給)の約1万円と「調整手当」(定額手当)の約2万円を払うだけで、公立同様に「定額働かせ放題」の状況になっていました。
労基署は、それらの手当では残業代がまかないきれないと判断し、是正勧告を出しました。同様の問題は組合員だけでなく、職場全体に広がっています。
<長時間労働・休憩未取得の原因となる業務例>
①定時前業務(生徒からの資料提出の受け取り、生徒の呼び出し対応、欠席連絡等の電話対応、生徒の職員室来室の際の対応など)
②授業準備、および授業準備に関わる教材研究
③生徒対応(補習・受験指導・進路指導等)
④保護者対応(電話・面談対応等)
⑤業務に関わる会議・打ち合わせ等(職員会議や学年会議、部会議、教科会議、コース会議などの定例会議)
⑥登校指導(朝の立哨指導、牛久駅前のバスの乗車指導など)
⑦入試業務(入試問題の作成や、採点、入試説明会への参加、学校周り等)
⑧部活動指導(授業後及び休日等に、部活動で生徒を指導・監督)
⑨学校行事(入学式や卒業式、学校見学会、入試説明会など)において、生徒誘導や保護者誘導、その他業務による就業時間外の業務
⑩定期テストの作成・採点及び成績処理
⑪長期休暇中の講習と検定講習等
⑫学級日誌のコメントや、教室の整備・掃除、出欠入力等の毎日の業務
◆今回の是正勧告の意義
(1)公立同様に「定額働かせ放題」が蔓延する私学の実態
今や高校の1/4は私学となっており、私学は教育業界全体にとって無視できない存在になっています。そして、私学は、公立の労務管理に準じている学校がほとんどです。
例えば、給与体系1つとっても、東洋大牛久同様に「基本給+定額手当」のような形で、公立の「給特法」(教職員給与特措法。問題は以下詳述)に類似する給与体系を取り、「定額働かせ放題」の状況が広がっています。
例えば、以下のように、2014年2月に公益社団法人私学経営研究会が行なった「私立中学・高等学校教職員の勤務時間管理に関するアンケート」からもそれは明らかになっています。
①私学の残業代の支払い方については、「教職調整額」のみ一律支給が34.7%と1/3ほど。同様の一律支給と考えられる5は、1と3の併用が多い。残業代が払われない「定額」の給与体系が私学にも広がっていることがわかる。
※「私立中学・高等学校教職員の勤務時間管理に関するアンケート」から
②「教職調整額」は基本給の4%が7割。明らかに公立教員に適用される「給特法」の枠組みが私学にも蔓延していることがわかる。
※「私立中学・高等学校教職員の勤務時間管理に関するアンケート」から
(2)部活動等を労基法に則り「労働時間」と認定し残業代支払いを命じた
今回の勧告では、公立教員と「同一労働」をしている私学教員の部活動等含む多種多様な時間外の業務について、労基署は労働時間と認定しました。
特に、教員の過重労働の最大の原因とされている部活動は、「教員が自発的に行なっているもの」として労働時間と認められないことが多いですが、指揮命令を受けて働いた労働時間として認定されています。
部活等様々な授業外の業務が労働時間と認定されることで、残業代の支払いはもちろん、業務削減・人員増加などによる過重労働抑制が必要になります。これは、教育業界全体へ大きな影響が見込まれます。
(3)「給特法」の矛盾も鮮明に
今回の是正勧告は、同様の問題に苦しむ公立教員へ適用される「給特法」(教職員給与特措法)の矛盾も鮮明にし、改めて「教員の働き方改革」を問い直す意義があります。
私学教員と異なり、公立教員は「給特法」によって、「超勤4項目」(①実習②学校行事 ③職員会議④非常災害などに必要な業務)以外は原則労働時間にならず、月給に給与の4%(「教職調整額」)を一律に上乗せして支給される代わりに、残業代が合法的にゼロで良いことになっています。
このような「定額働かせ放題」の状況が、際限ない業務を教員に負わせることや「労務管理の適当さ」につながり、教員の過重労働を招いています。
今年8月に出された「給特法」裁判の高裁判決においても、教員の職務や勤務形態の「特殊性」を裁判官は強調し、大半の業務が「教員の自主的なもの」とされ、教職調整額が支給されていることや教員に労働基準法の賃金制度は「なじまない」等を理由に、残業代の請求は退けられました。
「裁判長、17時以降に近くの学校に行ってみて」と原告の公立小教員。東京高裁は残業代支払いを認めず(2022年08月26日 huffingtonpost記事)
しかし、「同一労働」をしている私学教員に対して、今回、労基署はそのような裁判官の判断とは異なる判断をしています。労基署は、労基法の原則から勤怠記録通りに「超勤4項目」以外の業務含めて労働時間と認定し、残業代を支払うよう是正勧告を出しました。
教員は「特殊な労働者」ではなく、「一般の労働者」と同じと判断されているのです。
今回の是正勧告を通じて、改めて現場から「給特法」含む教員全体の労働環境改善に向けた問題提起をしたいと思います。
「同一労働」をしているにもかかわらず、公立と私立で異なる判断がなされる状況は明らかに矛盾しています。「給特法」は早期に廃止し、今公立教員が行っている多様な業務もしっかり労働時間と認めた上で、過重労働の改善を進めるべきです。
そして、そのためにも、同様の枠組みで働く私学教員が問題提起していく意義はとても大きいといえるでしょう。私学教員の皆さん、教育業界全体を変えるために、一緒に声をあげていきましょう!
◆私学教員の皆さん、一緒に今の環境変えませんか?
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